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  • 執筆者の写真飯室淳史

事後の読み物 マーケティングオートメーション導入よりも先にすることがあるだろ


そういえば5〜6年前にMAツール導入の相談に関する記事を何本かブログに書いたり外部講演したことがあったけど、もう遠い昔の話だ。。


私が働いていた会社のマーケティングで、MA(マーケティングオートメーション)を導入しようとしたのは2011年の末頃で、まだ日本には米国からはどこの会社のマーケティングオートメーションも入ってきていなかった。そう、したくても導入のしようがなかったのだ。


だから、どうしたかというと、既存のSFAとメールマーケティングツールといくつかの既存アプリ(顧客のWeb行動を追跡記録してスコアリングする機能)を拝み倒して組み合わせて、開発ベンダーさんにスクラッチでバインドしてもらい、自前のオリジナルマーケティングオートメーションシステムを作りあげて使い始めたのだ。それと同じくしてサイバー大学(LiSA:ライフサイエンスアカデミー)を立ち上げようとしていたので、サイバー大学に入学したお客さまをMAでトレースしてスコアリングして購買動機の高い顧客を見つけたり、ナーチャリングして育てることで販売勝率を高めることができると信じていたのだ。


これはおそらく2012年当時の日本でも初めてと言っても良いくらいのデジタルマーケティングエコシステムの独自開発だったはずで、しかもIT業界でもなくバイオ業界における試みだったので、講演依頼も相次いだし、いろいろな方が見学にお見えになったし、取材もやって来た。


海外で有名なエロクアやマルケトやハブスポットが日本へ入ってくるのは2013年以降の話で、グローバルデジタルマーケティングを担当したおかげで、この三大MAツールを使うチャンスにも恵まれた。このあたりのお話しも、凄く面白いネタがたくさんあるんだけど、きっとたぶんいつか詳しく記事にしたいけれど、そのハンドメイドなMAで学んだポイントは


  • 顧客を誘導するコンテンツは、最初はカタログデータくらいしかなかったために、コンテンツマーケティングなんかすぐに始められず、顧客が読みたがるようなコンテンツの準備に半年はかかってしまった

  • スコアリングの機能は比較的簡単に組めたが、顧客のどんな行動をスコアいくつでカウントするかというロジックが見当も付かない

  • スコアリングするとどんどんデータが出てくるが、スコアリングルールを70以上も組んで、見張っていたが、誰が買いたいお客さまか区別がつかない

  • 最高のスコアを叩き出した顧客のプロファイルを調べたら競合会社の営業だった

  • 「Amazonのように製品をWEBで販売している」わけではないB2Bの会社のWebでの顧客の行動をトレースしても、そもそも購入するためにWEBへ訪問していないので、「購入意思の無いお客さま」の行動を記録してスコアリングしても、意味がない(ことはやる前からわかっていたはずのことだが、やるまで誰も気がつかなかった)

  • せっかくスコアリングして、「特定の情報に興味がある」ことはわかっても、それが購買目的なのか、すでに購入した顧客が使い方を調べているかは区別はできない

  • 結局、あからさまな「見積もり依頼」とか、「資料送付希望」とか、「営業訪問希望」と言うオプトインボタンを押させるCall2Actionだけが意味のあるスコアとなった

  • ということは、MAツールである必要はなく、今まで使っていた普通のメールマーケティングツールで充分だったかも? は後の祭り

  • そもそも私はMAを未来のマーケティングツールの「魔法の杖」だと思って導入したので、何もしなくても自動で勝手にリードをスロットのようにじゃんじゃん産み出してくれる金のガチョウだと信じて疑わなかったが、全然違った、当たり前だが。

  • MAとは名ばかりの自動化とはほど遠い手間と労力が半端ないハンドメイドシステムだったために、マーケティングスタッフが疲弊して「もうMAなんか二度と使いたくない」と逃げ出す始末

  • マーケティング戦略がないのに、MAなんか導入してはいけなかった

  • 正直に言えば、投資に見合うだけの経験知も高まって、日本国内では社外から評価されて注目を集めたし、社内的には世界でも注目を集めて日本はデジタルマーケティングの実質的なグローバルリーダーの地位も獲得できたのだが、短期的な視点では、投資に見合うROIを売上の面では出すことはできなかった。もしも私が当時の社長だったら、二度と投資の許可をしなかっただろう(笑)


それはさておき、そうした痛い目にあった失敗体験から、お伝えできることは

マーケティングオートメーションの導入前にすること

マーケティングオートメーションとは、 名前のとおりマーケティングを自動化することだ。 しかし、 ツールを入れさえすれば、 すべてがうまく回り出すという魔法の杖ではない。その真価を発揮させるには、 その会社で事前にやっておくべき3つのことがある。と言うか、やることはたくさんあるんだけど、とりあえず大事なことを3つだけ取り上げたと思って欲しい、この3つだけやればOKとは言えない。

どこのマーケティングオートメーションがいいのか悩んでいるあなたへ

どのマーケティングオートメーション(MA)ツールがいいかと悩むのは、まるで

  • 「いいカメラを買えば、明日からプロの写真家になれる」

  • 「MacBookProを買えば、明日からアプリを作れる」

  • 「キレのいい包丁と最高の調理器具とレシピさえあれば、三ツ星シェフになれる」

などと信じて、 カタログをパラパラめくりながら、機能や性能や価格を比べるようなものだ。すぐにそんなことは止めたほうがいい。


MA で自動化できるのは、マーケティングプロセスのほんのわずかな一部分だけだ。自動化をプログラムするのはマーケターの仕事だということを忘れるな。


そもそもマーケティング戦略もマーケティング経験もないのに、どうやってマーケティングを自動化するというのだ?

それはまるで、「ロボットで自動化された工場はできあがったけど、まだ何を製造するのか決まっていないから、何もできない」のと同じなのだ。マーケティングオートメーションは、マーケティング経験なんかなくとも勝手に自動でマーケティングしてくれる魔法の杖ではない、経験豊富なマーケターがいるならば、そのノウハウをプログラミングして、そのほんの一部を自動化してくれるだけ、と思っておいたほうがいい。

そもそも、なぜ MAを導入しようなんて思ってしまったのだ?

  • マーケティング関係のセミナーやウェブポータルを見るとやたらと宣伝しているから(それは欲しいだけで使いたいわけじゃない)

  • 取引先の広告代理店が紹介してくれたから(それは売り込みたいだけだよ)

  • マーケティングを自動化できるなら、 人手不足なので助かると思ったから(大きな勘違い)

  • なんだか MA に未来を感じるから、ワクワクして今まで知らなかったマーケティングが始まる予感がするから(それはわかる気が する、私もそうだった)

  • 使っている人が良い、役に立つ、というから(それは嘘だから)

  • 新しいことが好きでとにかく試してみたい、時代に乗り遅れたくないから(それもわかるけど、必ず痛い目にあうよ)


はいはい、わかりました。いるんです、そういう人。いや、そうい う人 ば か り だ と 言 っ て い い 。 か く い う 私 も そ う い う 人 だ っ た ( 笑 )。


MAを使いこなせているBtoB 企業は、わずか5%以下だと聞いた。何千という企業が安易にMAを導入して失敗、挫折、頓挫しているのを目にしてきた。これはツールを売ることを目標にしているベンダーと、ツールを導入することを目標にしているマーケターのせいだ。

MAにだまされてはいけない。だますほうも悪いが、だまされるほ うも勉強不足。MAは魔法の杖じゃない。単なる手段であり道具であり、上手く使えば役に立つが、使いこなせる能力や知識やスキルや経験がなければ、導入しないほうがマシだ。

まずは診断チャート(1〜3)に従って、あなたがMAを導入すべきか、他にすることがあるのかを確認してほしい。

設問1)あなたの会社には 「マーケティング」 という名前の、 もしくは その機能と役割を持った部署(人財)がありますか?

はい →設 問 2 へ

いいえ→終了。 MAを検討する前に、 マーケティングという機能が会社に必要かどうか、 なぜ必要かについて経営者と話し合い、 部署を作るかどうかを決めよう。

これから作る設 問 2 へ


顧客との関係を営業が一手に担っていた時代はマーケティングが不要で営業開発、営業推進、営業企画、販売促進で充分

まぁ「マーケティング」なんて名前なんかはどうでもいい。横文字やカタカナだと過剰に反応する人がいるので、日本語でもいいのだ。 そうだな、たとえば 「商談開発」と呼んでもいいだろう。

さて、日本の BtoB 企業の多くは製造業が中心で、その業界構造が大手企業からの下請けとして機能するような図式が多く、与えられた設計図、仕様書どおりに製造して、品質の高い製品を納入すれば、そして他よりも安く作ればビジネスとして回っていたのだ(これまでは)。


この場合は、大手企業から仕事を取ってくる御用聞き的な営業がいればよく、取引先との関係を良好に保ち、いつでも真っ先に声 をかけてもらうことが重要な役割だった。つまり営業は必要だが、マーケティングなんか必要なかった(これまでは)。

あるいは、海外から完成品を輸入して日本で販売する、その製 品が魅力的で競合製品が日本になければ、営業が売り込めば売り 込むほど売れた。この場合は、コピー品が出回るまで独占販売を 続けられれば高い価格で売り続けられた。つまり、マーケティングは不要だったのだ(これまでは)。

もちろん、宣伝や広告、展示会やカタログは必要だった。一応、ウェブも用意してメルマガも発行するし、プレスリリースだって出してしまう。これは海外ではあり得ないが、広報部門をマーケティングが兼務するのが一般的な日本では、そうした営業を支援する雑務全般 を称して「マーケティング」と呼んだりしていたのだ。会社によっては、そんなこじゃれた横文字の組織の台頭を営業が許すはずもない。

ましてや営業上がりが経営幹部にいたり、社長が営業からの叩き上げだったりした場合には、マーケティングなんて経費を使うばかりのコスト部門で、売上には直接貢献しないチャラチャラして楽しく遊んでいる部署という認識しかない。

たしかに、おそろいのポロシャツを着て展示会で無料の景品を配り、派手に楽しく生き生きと働いているマーケティングの姿を、片や現場でボロ雑巾のようにお客さま相手に駆けずり回って汚れて大変な仕事を歯を食いしばってこなしている営業から見れば、「ふざけた連 中 だ 」 と 嫌 い に も な る と い うも の だ 。

「これだけ売上が厳しいのだから、カバンを持って売りに行って1 円でも稼いでみろ!」と言いたくなるのもわかる気がする(私は自分が営業の時に、マーケティングの連中にそう言い放ったし、マーケティングに異動してからは営業の連中にそう言われた)。


そうなって くると、独立したマーケティング部門なんか不要だったし、あっても営業部門の中の一部門で、「営業開発」「営業推進」「営業企画」 「販売促進」といった日本語名の部門だったりするのが現状だ。

まぁ、名前はどうでもいいし、本題じゃない。あくまで独立していない営業部門のサポートファンクションで下請けの立場でしかないか ら、営業に言われたことを言われたままにする部署に成り下がっている場合も多い。 売上が悪ければ、すぐに予算カットで展示会をやめようとか、広告を減らそうとか、刹那的な判断に一喜一憂する部署の一つでしか なかった。

それでも、ワンマンな社長がどこかで感化されたか、競合会社や取引先に「マーケティング」という部門があるらしいとか、その おかげで売上が伸びたなんて話を聞いては、思いつきで「よし、うちもマーケティング部門を作ろう!」なんて一夜にして作ってしまうのだ。 そのおかげで、よく営業責任者から聞かれる質問では社長の肝いりなんですけど、本当にマーケティングなんていう部門が必要なんで すかねぇ? が 多 い の だ 。

企業の売上を支えてきた営業のチカラがネットで情報武装した顧客に通じなくなる悪夢

BtoB 企業における売上は、ほぼ営業部門のおかげで成り立っ ている、あるいは営業が擁する代理店などの販売ネットワークのお かげである。これは間違いない。だから営業部門が一番で、その 声も大きく、決定権も大きい。


営業の役割は、

  • 「売上を上げ続けること」

  • 「クロージングをすること」

  • 「 案 件 を 探 し て く る こ と 」

  • 「 お 得 意 さ ま を 離 さ な い こ と 」

だ 。

そのた めに、業界動向に目を凝らし、変化に敏感になって、勘と経験で新しい商売のにおいを嗅ぎ分けては、持ち前のパワーと人懐っこさで、 顧客の懐に入り込み、とにかく最初の注文を取る。一度注文を取っ てしまえば、顧客との良好な関係構築と維持に努め、リピートオーダー をもらい続ける。まとめ買いやアップグレードだけでなく、関連製品を売り込み、どこよりも先に新製品を紹介し、生涯顧客価値を高めることで、放っておいても売上を立てられるエコシステムを構築する。

それが営業だ。 そのためには、ありとあらゆる顧客との接点は営業が統括し、営業が窓口となるので、製品が欠品すれば営業が謝り、コールセンターの電話対応の不手際も営業が謝罪に出かけ、「カタログが欲しい」と言われれば営業が届けに行く。営業は何でも屋だから忙しい、でも営業がいなければ売上が立たない。そんなBtoB 企業ばかりのはずだ。


しかしそのおかげで、BtoB 企業の売上は8割以上 が既存顧客によるもので、安定した売上を維持できている。経営も安心、すべて営業の努力の賜物なのだ(これまでは)。


そう、これまでは BtoB のお客さまにとって、メーカー側とは圧倒的に情報格差があり、営業マンがいないと必要な情報を集めることさえできなかったし、上げ膳据え膳でなんでもしてもらえる専属のコンシェ ルジュがそばにいるような環境に慣れてしまうと、自分では何もしなくなっ てしまう。でもこれまでは双方が幸せだった。

しかし、時代は変わってしまった。

インターネットのおかげで、お客さまが自分ですべての情報にアクセスできるようになり、売り手と買い手の情報格差がなくなった。いや、今や逆転してしまったと言ってもいいだろう、情報武装したお客さま には営業なんかでは歯が立たなくなってきたのだ。だから最初に声 もかからない、どんどん他社と比較される、価格は叩かれる、営業にはもはや価値がないと思われる、散々だ。


単なる “物売り ”営業が通じない状況をマーケティングとの連携プレーで打開するには

これまでどおりの「物売り」 営業では、もはや売上を立てること ができなくなってきた。


そこで流行りの提案型営業、コンサル型営業、 ソリューション営業の出番だ、ということになってきた。しかし現実には、

  • 提案という名前の製品を売るだけで、結果を担保しない提案型営 業はただの物売りと同じだ。

  • コンサルという名前の製品を売るだけで、結果を担保しないコンサル型営業はただの物売りと同じだ。

  • ソリューションという名前の製品を売るだけで、結果を担保しない ソリューション営業はただの物売りと同じだ。


ソリューション営業の時代もすでに終わりを告げている、何でもかんでもソリューションだと名前を付ければ売れるわけでもない。では、営業はどうすればいいのだ?


やっぱり社長の思いつきの「マーケティング」とかいう新組織に託すしかないのかと思う営業部長がいたら、そんなあなたにささやきたい。


営業部長がマーケティング部へ異動して率いていけばいい

それがベストかと言われたら、マーケティング経験者が社内にい ないのであれば、もっとも優秀な営業がマーケティングへ移るべきだし、 移すべきなのだ。それが最初の一歩だ。お金があるなら、よそからマー ケティング経験者を雇ってきてもよいかもしれないが、私は営業がマー ケティングへ異動することをお勧めする。ただし兼任ではない専任だ。


そして大切なポイントは、「なぜマーケティングが必要なのか」と「マー ケティングだけに注目しても仕方がない」ということだ。営業とマーケティ ングが同じ目標をめざして、違う役割と機能で協力することでお互 いに助け合って成果を最大化する。そのための営業とマーケティングの役割分担なのだ。同じ仕事をしているようなら、組織を分ける 意味はない。


雑用も含めて何でもかんでも営業だった時代から、マーケティン グが商談を増やし、営業が刈り取る。そうやって売上を拡大してい けたら最高じゃないか。


たとえば、クソ忙しい営業に何でもかんでもやらせる時代から、市場 (顧客)開発、市場(顧客)育成、商談(案件)開発はマーケティング が行い、営業はクロージングの責任を持つ。もっと言えば、カスタマー ジャーニーのどこをマーケティングが担保して、営業をどこが担保す るのか、それを明確に営業とマーケティングで握ればいい。それは経営者の責任だ。


経営者がマーケティングの役割と責任範囲を明確にしていないと、営業の眼に映るマーケティングの活動だけが責任範囲に見える。た とえば、キャンペーン実施、カタログ製作、広告宣伝、展示会出展、 セミナー開催、景品作製、メルマガ送信、ウェブ掲載など、お金 を使うばっかりの目標達成のための行動がイコール責任範囲に見え てしまう。


営業もマーケティングも同じ会社で同じ目標を共有している仲間で あり、数値目標達成のために役割分担をしているに過ぎない。役割が違うのだから、営業と同じことをしろというのは無駄な二重投資 であり、営業経験のないやつに営業をさせても効果が出ない。


直接的に売上を上げる責任は営業にあり、マーケティングにはな い。というか、顧客担当していないし、そもそも役割が違うのだからしてはいけないのだ。同じ仕事をするなと言いたい。


マーケティングがウェブの Eコマースで直販するなら、売上に直接貢献できるとは言える。つまり、違うチャネルで販売するという意味だ。


マーケティングの役割と責任とは、次の2つだ。

  • 商談を増やして営業に供給すること=未来を創ることで売上に貢献すること

  • 営業が現場で「営業自ら商談を創る、育てる、クロージング する」=今期の売上を創るための支援ツールやしくみを供給し続けることで売上に貢献すること


宣伝広告、カタログ作成、展示会、キャンペーンにウェブやメルマガとやることはたくさんあるが、それらはあくまで役割と責任を果たすための手段でしかない。


もちろん、営業が商談を創ったり育てたりする重要顧客もしくは大型製品群などでは、マーケティングは営業支援に徹し、役割分担が被って無駄な二重投資にならないように切り分ける。そうした明確な役割分担をしていない経営者と当事者双方の問題でもある。 そう、経営者の責任は大きいのだ。


設問2)マーケティングの存在意義、 役割と責任、 そのゴールは明確に ありますか? そして 、 マーケティング のゴールと現状とのギ ャッ プ か ら 、ゴールを達成するうえでもっとも大きな障害となっている課題を特定して、 それを解決する「戦略」 をすでに立案していますか?


はい →設問3)

いいえ→終了。 MAを検討する前に、マーケティングの存 在意義、役割と責任、そのゴールを経営者と話し合って 、マーケティングの戦略を立案し 、ゴールを達成するためにすべきアクションプランを決 めましょう。 そのプランのほんの一部で MAを使うかもしれない、という程度です。

これから作る設問3)へ、と言いたいところですが、何もないままこれ以上先へ進んでもあまりためにはなら ないので、まずは存在意義、役割と責任、そのゴールを経営者と一緒に確認して先にマーケティング戦略まで最終化してから、出直してくると良いでしょう。

マーケティングとは経営である

多くの先進的な外資系では、このマーケティングという組織はとてもよく開発されて発展している。まず、日本の会社に圧倒的に少ない CMO が、海外では経営陣として経営に参画するのが当たり前だし、CMO からCEOになるのは自然なキャリアのラインだし、マーケティングのトップが社長になるのはよく目にする。


さらに、マーケティングが機能別に細かく進化している。

  • ストラテジックマーケティング

  • オペレーショナルマーケティング

  • プロダクトマーケティング

  • フィールドマーケティング

  • リージョナルマーケティング


すべて挙げていくときりがないくらいだ。私が GE 在職中に率いた全世界を統括するグローバルスケールでのデジタルマーケティングは比較的新しいが、今ではかなりの多くの会社に存在する役割となっている。それほどに専門化されているのは、すでにその存在意義が認められ、その価値が十分に 経営者にも営業にも理解されているからだろう。


私のよく知る外資系の場合は、経営戦略室や経営企画室といった 経営者(社長)の参謀となるような組織が存在しなかった。じゃあ、 会社の経営戦略はだれが作っているのと問われたら、おもにマーケ ティングがリードして、社長をはじめとする経営チーム(マーケティング、 営業、サービス、経理、人事、購買物流、IT、法務の各部門長)が 経営を行っていた。マーケティングが創るのは製品の販売戦略だけではなく、会社の経営戦略そのものなのだ。


そうだ、マーケティングは経営なのだ。


設問3)マーケティング戦略まであるとして、 肝心のお客さまのデータはちゃんとありますか? お客さまとコンタクトできる情報がそろっていますか?

はい →今すぐMAを導入を

いいえ→終了。MAを検討する前に、 お客さまデータをビ シッとそろえましょう。

これから作るじゃあ、作ってくれればいいけど、何年かかると思っ作るているの?


顧客データをそろえなければ何も始まらない

MAは2000年の初めに米国で開発されたツールだが、日本に入ってきたのは2013〜14年頃で日本とMAを利用できる環境と前提がまったく異なるのだ。


米国では、数百万から数千万件分のメールアドレスのデータを、「これから市場攻略をかけたい」「リー ドを獲得したい」と考えたら、その市場にいる顧客のデータを目的に応じて絞り込んで購入してくる。


それをファネルの一番上に放り込 むイメージで、あとはポツポツと反応してきた顧客のプロファイルやウェ ブ行動データ、スコアリングデータから、まさに自動で対応パターンをナーチャリングシナリオに沿って提供できるように MA が勝手にやっ てくれるだけ。


そうすると、500万件のメールを送信して、わずかクリック率が0.3%だったとしても、 500万×0.3%=166,666 なんと16万件以上のクリックが見込めるわけだ。


このMAの利用する際の前提条件は意外と重視されていない。 売る方は買う側にデータがそろっているかを売る前に確認せず、MA導入する側も「メルマガ流しているからメアドくらいはあるから大丈夫だろう」くらいに軽く考えている。どっちもダメダメだ。


しかし、日本の顧客データというものは、そういうMA での使い方を想定した準備がされていない。勘定系のデータは取引先としての データだし、会社単位であることがほとんど。マーケティングのメルマガを送るメールアドレスは、

  • 展示会でもらった名刺を放り込んだだけか

  • ユーザーが勝手にウェブでメルマガ購読の登録を申し込んだか

  • ホワイトペーパーなどのダウンロードと引き換えに手に入れた顧客情報か

  • 営業がもらってきた名刺を打ち込んだものか(この名刺を受け取っただけでオプトインと見なすのは賛成も推奨もしない、最悪のデジマの打ち手の一つだと思っている)

  • 製品を買ったときの顧客登録データか

  • 修理履歴に残る 顧客データか

  • コールセンターにかかってきた顧客が申告した顧客データか


これらは、回収した目的も時期も情報の量も質もバラバラでだ。


たとえば、東京大学医科学研究所も、東大医科研、東京大学医 科研、東大医科学研究所などバラバラに入力されているし、古い情 報ならとっくに所属や電話番号やメアドは変わっているかもしれない。 出所の異なるデータベースに二重、三重に存 在するユーザーに横串を刺して一人の顧客だと認識したうえで、正 しい所属などのプロファイルにしてからMAで使えるようにちゃんとデー タクレンジングされていないと使えない。しかし、それを知らない人は意外に多い。特にABM(アカウントベースドマーケティング)などをやりたい野望があるなら、なおさらだ。


そんな手間暇を考えると、anonymousな匿名からコツコツ育てる、と言うのも悪くない、私はそっちの方が好きだ。


日本でやるとしたら、オプトインなメルアドを足したところで500万件になることなんかない。せいぜい数万だ。仮に10万メルアドをMAに放り込んで使っても、0.3%のCTRでは300件しかない。ココカラさらにCall2Actionを繰り返して絞り込んでいけば、数件しか残らないはずだ。コンテンツを準備する手間暇を差し引き、自動化することでの省力化(と言っても自分ですべて手順をプログラムするわけだが)を考えても、日本でMAを導入して、投資の元を取るのは、それほど簡単ではない。だから、MAがブームになった日本での導入率は高いのに、稼働率は5%以下という低い現状があるのだ。


なんだか、マーケティングっぽい話を書いてしまったが、あくまで私の経験と失敗に基づく知見であり、あなたの業界のあなたのBusinessで、これがそのまま当てはまるかどうかはさだかではない。

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