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  • 執筆者の写真飯室淳史

WORK-OUT 攻略ガイドブック簡易版

この記事は、企業向け研修「ワークアウト基礎」にすでに参加申込みをなさった皆さんに向けた記事であるが、あまりにも問い合わせが多いので、期間限定で全文公開する。

公開期限:2021年3月末日まで


注意事項オンライン版ワークアウト基礎研修に参加の皆さんは、攻略ガイドブックフルバージョンを配信しますので、そちらを事前課題も含めて、参加当日までに読了願います。


「企業内ワークアウト基礎ワークショップ」および「オンライン版ワークアウト基礎研修」もしくはWork-Outのadvanced版である「CAP(変革加速プロセス)」にご興味のある方は、📩お問い合わせいただくか、メルマガ登録をして、案内をお待ち願います。


研修に参加するかたは、この記事だけで2万文字以上あるので直前に読むのはほぼ無理なので、時間をとって理解するまで読み込むこと。また、最後に「時間泥棒総集編」も読むようにリンクを貼っているがあちらは5万文字あるので斜め読みで済まないと覚悟して欲しい。

また、オンライン版WORK-OUT研修参加者にお読みいただくWORK-OUT攻略ガイドフルバージョンは、約6万文字に相当するため、「時間泥棒総集編」と合わせて10万文字近いために、研修当日の2週間以上前から読み始めることを推奨する。

フルバージョンに近いものは、すでに日経の連載記事↓で公開されているので、研修に参加されない方でも、お読みいただけます。




「ワークアウト WORK-OUT」とは何か?

 今日は変革を加速する最も代表的(かつ効果的)なツールの一つである「ワークアウト WORK-OUT」とは何かについてシェアしたいと思う。


「ワークアウト」ときくと、あの「ビリーズブートキャンプ」を思い出す人が多いかもしれないが、これはファシリテーションをベースにした会議や話し合いにおける問題の発見と解決の手法だ。(ファシリテーションとは何か、に関してはたっぷり後述する)


 ただ、詳しい手法や手順を解説する前に、どうしてこんな「ワークアウト WORK-OUT」という変革ツールが必要になったのか、と言う背景をシェアしたい。きっと、これを読む皆さんにも当てはまることが多いはずだ。


はじめは

 創業初期を思い出して欲しい、起業したばかりのまだ会社が小さかった頃のこと、いや失礼、そんな経験がなければ、目をつむって想像するのでもよい。私は、初めて勤めた会社(32年間一度も転職をしなかったので最後の会社でもある)の創業メンバーではなかったが、大学を出て務めたばかりの頃は、社員も数十人しかいなかった(現在は200名ほどの事業部)から、たしかに以下のような感じだった。


  • 誰もが経験や、年齢や、肩書きや、役割なんかに関係なく、創業者も従業員も一緒になって全員で仕事を進めている

  • そこにはBoundary(境界線)なんかは存在しないから、「これは誰の仕事だ?」というような会話は存在しない。そこにいる人が、できる人が、手が空いている人が、そして何かに気がついてしまった人が、その仕事をするだけだ

  • 形式張った会議などを開かなくとも、メンバー同士のコミュニケーションは円滑で、経営者も従業員も、皆が同じ情報を共有できて、情報格差などはなく、意思の疎通がはかられている

  • いわゆるピラミッド型の組織構造や職位の階層構造に伴う威圧感や、恐怖はなく、どんな発言も心理的な安全性が担保されているため、安心して働くことができる

  • 一人の失敗を皆がカバーし、失敗から学び、学んだことはすぐに全員が共有することで、組織として学習し、組織として成長を続けていく

  • 意思決定も経営判断においても無駄な手続きや儀式もなく、必要なときに即座に決断が下される

  • 誰もが、この組織がどこに向かっており、今はどこにいるか、どんな問題や困難に立ち向かっているかを判っているから、自分が何をすればいいのかが指示をされなくても判って、自発的に行動している


 なんだか夢のような話だが、きっと体験した人はいるだろうし、私にとっては実話なのだ。


ところが

  • 時間が経って、売り上げも市場シェアも増えて、組織として成功を収め、従業員も増えてくると

  • 創業時のようなやり方では済まされなくなる

  • お客様の数も多く、取り扱う製品の種類も、販売件数も、納品件数も、問い合わせ件数も、トラブル処理も、桁違いに増えてくる

  • そのために、厳格な社内ルールがつくられていき、業務プロセスもマニュアル化されて、新しく入ってきた社員が即戦力となるように、役割が明確化され、職務内容がより専門化され、組織化されてくることで、だんだんとBoundary(境界線)ができはじめる

  • 今まではおかなかったパーティション(間仕切り)をおいて、自分だけの仕事に没頭するようになり、一部屋にいろいろな役割の人が一緒に働いていたのが、人数も増えて、部署毎に部屋が分かれ始めて、同じ仕事をする人たち同士が、集まり始めるようになることで、Boundary(境界線)が目に見える形となってくる

  • そうなると、より自分の仕事に没頭するようになり、部署や部屋のBoundary(境界線)を越えて積極的にコミュニケーションをとる必要性を個人が余り感じなくなる

  • 自分の仕事だけにしか興味を持たなくなると、もはや従業員は、会社全体がどこに向かっていて、会社が今はどんな状況にあるかにも興味を失ってしまい、

  • 従業員は誰もが、部署毎の個別最適化KPI(Key Performance Indicator 主要業績評価指標)だけを目指して、自分の仕事だけを追いかけるようになる

そうなると

  • 個別最適化されたKPIだけを追いかけるようになると、

  • 自分の評価をするのは、KPIであり、KPIを決めた上司であり、KPIによって報酬の額が左右されるとなれば、自分の成績を判断するのは上司であると考えるようになるから、上司を向いて仕事をし始める

  • こうなってくると、もはやお客様がどんな欲求・要求・需要を持っているか、どんな問題を抱えて、どんなペインポイントを感じているか、いま市場ではどんな変化が起きているかには、何ら興味を示さなくなり(示す必要がなくなり)、

  • 自分の所属する組織の中で、自分が与えられた仕事を、より正確に、迅速に、実行することで、上司に評価されることに、従業員は安堵するため、小さな部署への帰属意識も高まっていき、同時にお客様への興味が消え失せる(その必要が無くなる)

そのために

  • 従業員がお客様への興味を失うと、いま市場では何が起きているかという情報を集めようともしなくなり、組織の中でも求められず、シェアもされなくなる

  • そうした情報の遮断によって、不都合なモノを見ないで済むことから、危機感はまったく共有されず

  • ますます、内向きの忠誠と社内KPIの達成志向が強くなっていくが、自分の仕事さえしていれば給料はもらえることから、「これが仕事なのだ」と信じようとする

  • ますます加速する市場の変化には適応できず(変化に気がつかないし、気がついても対応しない)、自らを変革する意思さえも(その必要性さえも)失っていく

  • ただ、お客様からの要求やフィードバックに直接さらされる現場担当者たちだけが、お客様からの要求と、お客様に関係しないKPIとの板挟みから、「理不尽」さを感じ始めて、

  • 自分たちをそんなツライ状況においたままにする上司や経営者に対して不信感を抱くようになり、

  • いつまでも変わらない自分の状況に、やがてあきらめるようになり、モチベーションはとことん下がる

思い当たることがいくつもある、と言う方へ

どうにかして、一番最初に書いた「創業初期」のころのように

  • 職位や職務を超えて、

  • 経営者も従業員も一緒になって、

  • Boundary(境界線)を越えて仕事をして

  • 自らコミュニケーションをとりあって

  • 働く誰もが、組織全体がどこに向かって、どんな問題を抱えているかを理解して

  • 皆で助け合って問題を発見し、問題を解決し、その場で決断して、すぐに行動して

  • お客様を向いて仕事をして、お客様に価値を届け続ける

ことはできないだろうか? と、考えたのが、ワークアウトが開発された原典だ。


ワークアウトとは、

  • 職能や職位の枠を超え、マネージャーと従業員が一緒になって

  • 仕事の上での重要な問題に取り組み

  • 解決のためのアドバイスを考えだし

  • 公開の場で責任者へ提案し

  • 公開の場で討論し、

  • 責任者はその場でYES/NOを決定

  • 承認後は提案を遂行し進捗報告することで

  • 問題の発見と解決をする手法であり

  • Boundary-less(境界線のない)組織文化と行動様式を育てる取り組み

「ワークアウト WORK-OUT」の語源は、お客様にとって価値のない仕事(WORK)なんか、はじき出す(OUT)という意味が込められている(らしい)。

 

あらゆる組織の壁をぶち破り
問題の発見と解決を導き

環境変化に適応できる自己変革能力を獲得することで

変革を加速する手段「ワークアウト」


はじめに これはワークアウトセッションの講義スライド116枚(簡易版)の説明資料です。「学びの本質」Facebookグループでは、ワークショップを受講された皆さんに限って、すべてのスライドPDFのダウンロードが可能です。

 

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)において、日常茶飯事に利用される 「境界のない企業 boundaryless company」を実現するための組織運営の手法であるWorkout(TM)を、今回の変革加速リーダーシップ基礎で演習する。


 これは1980年代末からGE全社規模で導入・実施したもので、30万人の社員全員が、これを身につけていると思っていただいていい。GE workout もしくは GE ワークアウト でググれば、いくらでも詳細な解説が出てくる。


 ここでいう「境界のない企業」は、内部においては組織間や地域間の壁がなく、全員が一致団結するための障害となるような管理体制がない組織である。逆に「障害となるような管理体制」とは、日本企業でも(外資系でも)よく見受けられるような特定の個人および経営陣が、政治的な勢力を維持拡大することを目的に構成する「派閥」を意味する。


 そして外部においては重要な顧客との壁がなく、「顧客満足」や「お客さまの成果を最大化する」という共通目的に向かって、全社員が労力と知恵を出し合い、失敗を恐れずにリスクを取って挑戦し、失敗から学び、アジャイルに繰り返し挑戦し続け、成功するまで諦めない、全員が成長できる学習する組織そのものである。


 それはルールや規則やマニュアル、あるいは利用するツールやシステムの業務プロセスによって、運営されるものではない(業務プロセスに落とし込むことも重要ではあるが、それは結果としての話であって、それが原動力ではない)。それは働く社員の意識・価値観・行動様式すなわち企業文化によって成り立つものだ。そのためには、社員ひとりひとりが「環境変化に適応できる自己変革能力を獲得する」ことで、「学習する組織」と言う企業文化に成長することによってのみ実現できる。


 また、ワークアウトとファシリテーションは密接な関係があり、その応用範囲も広く、狭義では、会議の手法であり、テクニックであり、みなさんの社内会議、営業会議でも使え、社内のプロジェクトマネジメントや、大きな意思決定を行う際のベクトル合わせでも活用できる。


 広義では、人々の合意を得て、問題に立ち向かい、大勢の人を動かしながら、変革を加速する基本的な学習プロセスであり、コンセンサス、アクセプタンス、エンゲージメント、モチベーションという言葉が重要なキーワードになる。


 応用すれば、キーアカウントマネジメント(重要顧客管理)を担当する営業部門による顧客との打ち合わせや交渉でも、顧客への変革推進プロセスの教育でも絶大な効果を発揮する。事実、GEヘルスケア・ジャパン株式会社では、多くの取引先に対して、ワークアウト研修を何十年も実施してきている。


 ワークアウトを使って、問題や障害を解決するのも、組織の文化を変革するのも、自己変革能力の獲得するのも、どんな成果に結びつけるのかは、あなた次第だ。

問題ってなんだろう?

 ワークアウトは「問題の発見と解決を導く(測る・壊す・創る)」手法である。


 よく「問題だ、問題だ、問題だ」って言う人がいるけれど、それはまるで銭形平次の八五郎(知っています?)が「親分、てえへんだ、てえへんだ、てえへんだ、」と飛び込んでくるのとたいして変わらない。


 問題とは、単独で成立するものではなく、まずはじめに何か理想やゴールがあって、ゴールと現状とのギャップが「問題」だ、と定義したのが以下の図だ。 (以下の図のB2Bハックカードに関しては後述)




 ここで言う「問題」とは因果関係で言えば、結果に相当する。したがって問題(結果)には必ず原因がある。問題を解決する、ということは、すなわち根本原因を突き止めて、その根本を排除することで、原因の結果である問題を排除する、すなわち問題を解決することだ。


技術的問題解決と環境変化への適応

 ただ、技術的に解決が可能な問題(異常な事態を正常な状態へ戻す・環境の変化の影響を最小限にとどめる・人間の持つ本来の能力では実現不可能なことをテクノロジーによって次元可能にするなど)と、我々自身が生き延びるために、環境変化に適応できる自己変革能力を獲得することでしか問題に対応できない場合がある。


小学校の時に友達が遅刻してきて先生にこう問われた。


先生「なぜ遅刻してきたの!?」

友達「・・・・・あるいてきたから」

先生「じゃ、明日からはどうするの?」

友達「じゃ、はしってくるよ」


そうじゃない。


 真の原因、本質に迫れていない裏表の刹那的な対症療法でしかない解決策は何の解決にもならないが、実際にはよくある話だ。

  • コミュニケーション不足だから、 コミュニケーションを活性化しよう

  • 意識が変革されていないから、意識を変革しよう

  • 残業が多いから、残業をなくそう

  • 売上が足りないから、売上を増やそう

  • 危機感がないから、危機感を持たせよう

こうなると、もはや笑い話だが、実話である。御社にも覚えがないだろうか?


 あの友達が遅刻した原因は、寝坊したからなのだ。しかし、さらに根本原因を探れば、ゆうべ遅くまで漫画を見ていたか、ゲームをしていたか、テレビを見ていて夜更かしして、睡眠時間が普段よりも短くなったので、睡眠が不足して朝寝坊した、と言うのが根本原因なのかもしれない。あるいは宿題で知恵熱でも出して、よく眠れなかったのかも知れない。


 もちろん目覚ましをセットする、と言った技術的な問題解決でも対応は可能だろう。


仏作って魂入れず

 ただ根本原因を探らぬままで問題を解決しようとするのは、単なる対症療法でしかなく、それはインフルエンザに罹患したにもかかわらず、高熱が出ているからと、単に熱を下げるために解熱剤だけを飲んで済ませる、のと同じことだ。それでは熱は下がっても、インフルエンザがすぐに治るわけではない。原因を解決するためには、根本治療であるインフルエンザウイルスの作用機序そのものを阻害するタミフル・リレンザ・ゾフルーザなどの抗インフルエンザウイルス剤を飲む必要がある。


 また個人のインフルエンザを治すという視点だけではなく、社会という大きな目で見れば、感染対策をする必要があり、ウイルスにかからないために、インフルエンザに罹患している人に近づけない、事前に多くの人が免疫力を高めるためにワクチンを接種する、なども根本的な技術的な対策になってくる。


 ただ、マスクをするというのは技術的解決策に見えるが、本人の意思でマスクをつけてもらう必要があり、そこには、他の人に感染させない配慮をするという意識と行動すなわち適応の問題になってくる。


 同様に、抗インフルエンザウイルス剤は技術的な解決策ではあるので、患者に処方することはできるが、そのクスリを患者が自らの意思で飲まなければ、効果は発揮しない。


 遅刻した友達の話に戻すと、目覚まし時計をセットするという対症療法(技術的問題解決)では、彼は起きないかも知れない。自ら生活態度を改め(自己変革能力の獲得)、学校へ行くことが自分にとって楽しいことにでもならない限りは、彼の遅刻は治らないのではないか。


 技術的な問題解決と、環境変化に適応できる自己変革能力の獲得を例えると、馬を水飲み場に連れて行くことはできるが(技術的な問題解決)、馬に水を飲ませることはできない、馬自身が自分で喉が渇いて、水を飲みたいと行動を起こさない限りは水は飲まない(環境変化に適応できる自己変革能力の獲得しない限り、自分の行動を誰か他人によって変えることはない)。


 この問題は、変革を推進する上では、最も顕著に障害となる。働き方改革で、どれだけルールを決めようとも、ルールを守らなければ骨抜きで、仏作って魂入れずだ。

ワークアウトの基礎

こんな会議はないだろうか?いや、たぶんあるはずだ

□ 参加者がほぼ同じ (70~80%)

□ 人の意見を否定する(前例がないからダメだ)

□ 意見を言わせない雰囲気がある

□ 開始時間に遅れる人がいても誰も声をかけない

□ 議題以外の話を展開(具体性がない議論)する

□ 最後は精神論「目標に向かってがんばろう」

□ 結論が出ても実行されない

□ 準備不足(会議に出てから初めて資料を読む)

□ そもそもなんの会議がわからないけど、とりあえず参加した

□ 上司、職位、キャリア、ビッグマウスが仕切って自分の意見を押し付ける

□ いつも決まった人ばかり話す

□ まったく発言しない人がいる

□ 権限委譲ができていないため参加者がやたらと多い

□ 原因を特定しないまま、解決策だけを議論して盛り上がる

□ 会議の議題とは異なる問題点を話し合って終わる

□ 内職、居眠り、スマホをいじっていても誰も注意しない

□ 時間通りに終わった試しがない

□ 結論が出ず次回に持ち越す

□ 後日、決定事項が変わる

□ 議事録の内容が決定された事実と異なる

キリがない(笑)いや、御社でも胸に手を当ててみるといい。いくつ思い当たっただろうか?

チェックがいくつ付いたか数えてみよう____個/20

 

ワークアウトとは、その仕事に関わる

  1. 主要な人たちへ権限を委譲し

  2. 組織の壁、職種、肩書・職位、権威や権限のすべてを越えて話し合い

  3. 文化(意識・価値観・行動様