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  • 執筆者の写真飯室淳史

WORK-OUT 攻略ガイドブック簡易版

この記事は、企業向け研修「ワークアウト基礎」にすでに参加申込みをなさった皆さんに向けた記事であるが、あまりにも問い合わせが多いので、期間限定で全文公開する。

公開期限:2021年3月末日まで


注意事項)オンライン版ワークアウト基礎研修に参加の皆さんは、攻略ガイドブックフルバージョンを配信しますので、そちらを事前課題も含めて、参加当日までに読了願います。


「企業内ワークアウト基礎ワークショップ」および「オンライン版ワークアウト基礎研修」もしくはWork-Outのadvanced版である「CAP(変革加速プロセス)」にご興味のある方は、📩お問い合わせいただくか、メルマガ登録をして、案内をお待ち願います。


研修に参加するかたは、この記事だけで2万文字以上あるので直前に読むのはほぼ無理なので、時間をとって理解するまで読み込むこと。また、最後に「時間泥棒総集編」も読むようにリンクを貼っているがあちらは5万文字あるので斜め読みで済まないと覚悟して欲しい。

また、オンライン版WORK-OUT研修参加者にお読みいただくWORK-OUT攻略ガイドフルバージョンは、約6万文字に相当するため、「時間泥棒総集編」と合わせて10万文字近いために、研修当日の2週間以上前から読み始めることを推奨する。

フルバージョンに近いものは、すでに日経の連載記事↓で公開されているので、研修に参加されない方でも、お読みいただけます。




「ワークアウト WORK-OUT」とは何か?

 今日は変革を加速する最も代表的(かつ効果的)なツールの一つである「ワークアウト WORK-OUT」とは何かについてシェアしたいと思う。


「ワークアウト」ときくと、あの「ビリーズブートキャンプ」を思い出す人が多いかもしれないが、これはファシリテーションをベースにした会議や話し合いにおける問題の発見と解決の手法だ。(ファシリテーションとは何か、に関してはたっぷり後述する)


 ただ、詳しい手法や手順を解説する前に、どうしてこんな「ワークアウト WORK-OUT」という変革ツールが必要になったのか、と言う背景をシェアしたい。きっと、これを読む皆さんにも当てはまることが多いはずだ。


はじめは

 創業初期を思い出して欲しい、起業したばかりのまだ会社が小さかった頃のこと、いや失礼、そんな経験がなければ、目をつむって想像するのでもよい。私は、初めて勤めた会社(32年間一度も転職をしなかったので最後の会社でもある)の創業メンバーではなかったが、大学を出て務めたばかりの頃は、社員も数十人しかいなかった(現在は200名ほどの事業部)から、たしかに以下のような感じだった。


  • 誰もが経験や、年齢や、肩書きや、役割なんかに関係なく、創業者も従業員も一緒になって全員で仕事を進めている

  • そこにはBoundary(境界線)なんかは存在しないから、「これは誰の仕事だ?」というような会話は存在しない。そこにいる人が、できる人が、手が空いている人が、そして何かに気がついてしまった人が、その仕事をするだけだ

  • 形式張った会議などを開かなくとも、メンバー同士のコミュニケーションは円滑で、経営者も従業員も、皆が同じ情報を共有できて、情報格差などはなく、意思の疎通がはかられている

  • いわゆるピラミッド型の組織構造や職位の階層構造に伴う威圧感や、恐怖はなく、どんな発言も心理的な安全性が担保されているため、安心して働くことができる

  • 一人の失敗を皆がカバーし、失敗から学び、学んだことはすぐに全員が共有することで、組織として学習し、組織として成長を続けていく

  • 意思決定も経営判断においても無駄な手続きや儀式もなく、必要なときに即座に決断が下される

  • 誰もが、この組織がどこに向かっており、今はどこにいるか、どんな問題や困難に立ち向かっているかを判っているから、自分が何をすればいいのかが指示をされなくても判って、自発的に行動している


 なんだか夢のような話だが、きっと体験した人はいるだろうし、私にとっては実話なのだ。


ところが

  • 時間が経って、売り上げも市場シェアも増えて、組織として成功を収め、従業員も増えてくると

  • 創業時のようなやり方では済まされなくなる

  • お客様の数も多く、取り扱う製品の種類も、販売件数も、納品件数も、問い合わせ件数も、トラブル処理も、桁違いに増えてくる

  • そのために、厳格な社内ルールがつくられていき、業務プロセスもマニュアル化されて、新しく入ってきた社員が即戦力となるように、役割が明確化され、職務内容がより専門化され、組織化されてくることで、だんだんとBoundary(境界線)ができはじめる

  • 今まではおかなかったパーティション(間仕切り)をおいて、自分だけの仕事に没頭するようになり、一部屋にいろいろな役割の人が一緒に働いていたのが、人数も増えて、部署毎に部屋が分かれ始めて、同じ仕事をする人たち同士が、集まり始めるようになることで、Boundary(境界線)が目に見える形となってくる

  • そうなると、より自分の仕事に没頭するようになり、部署や部屋のBoundary(境界線)を越えて積極的にコミュニケーションをとる必要性を個人が余り感じなくなる

  • 自分の仕事だけにしか興味を持たなくなると、もはや従業員は、会社全体がどこに向かっていて、会社が今はどんな状況にあるかにも興味を失ってしまい、

  • 従業員は誰もが、部署毎の個別最適化KPI(Key Performance Indicator 主要業績評価指標)だけを目指して、自分の仕事だけを追いかけるようになる

そうなると

  • 個別最適化されたKPIだけを追いかけるようになると、

  • 自分の評価をするのは、KPIであり、KPIを決めた上司であり、KPIによって報酬の額が左右されるとなれば、自分の成績を判断するのは上司であると考えるようになるから、上司を向いて仕事をし始める

  • こうなってくると、もはやお客様がどんな欲求・要求・需要を持っているか、どんな問題を抱えて、どんなペインポイントを感じているか、いま市場ではどんな変化が起きているかには、何ら興味を示さなくなり(示す必要がなくなり)、

  • 自分の所属する組織の中で、自分が与えられた仕事を、より正確に、迅速に、実行することで、上司に評価されることに、従業員は安堵するため、小さな部署への帰属意識も高まっていき、同時にお客様への興味が消え失せる(その必要が無くなる)

そのために

  • 従業員がお客様への興味を失うと、いま市場では何が起きているかという情報を集めようともしなくなり、組織の中でも求められず、シェアもされなくなる

  • そうした情報の遮断によって、不都合なモノを見ないで済むことから、危機感はまったく共有されず

  • ますます、内向きの忠誠と社内KPIの達成志向が強くなっていくが、自分の仕事さえしていれば給料はもらえることから、「これが仕事なのだ」と信じようとする

  • ますます加速する市場の変化には適応できず(変化に気がつかないし、気がついても対応しない)、自らを変革する意思さえも(その必要性さえも)失っていく

  • ただ、お客様からの要求やフィードバックに直接さらされる現場担当者たちだけが、お客様からの要求と、お客様に関係しないKPIとの板挟みから、「理不尽」さを感じ始めて、

  • 自分たちをそんなツライ状況においたままにする上司や経営者に対して不信感を抱くようになり、

  • いつまでも変わらない自分の状況に、やがてあきらめるようになり、モチベーションはとことん下がる

思い当たることがいくつもある、と言う方へ

どうにかして、一番最初に書いた「創業初期」のころのように

  • 職位や職務を超えて、

  • 経営者も従業員も一緒になって、

  • Boundary(境界線)を越えて仕事をして

  • 自らコミュニケーションをとりあって

  • 働く誰もが、組織全体がどこに向かって、どんな問題を抱えているかを理解して

  • 皆で助け合って問題を発見し、問題を解決し、その場で決断して、すぐに行動して

  • お客様を向いて仕事をして、お客様に価値を届け続ける

ことはできないだろうか? と、考えたのが、ワークアウトが開発された原典だ。


ワークアウトとは、

  • 職能や職位の枠を超え、マネージャーと従業員が一緒になって

  • 仕事の上での重要な問題に取り組み

  • 解決のためのアドバイスを考えだし

  • 公開の場で責任者へ提案し

  • 公開の場で討論し、

  • 責任者はその場でYES/NOを決定

  • 承認後は提案を遂行し進捗報告することで

  • 問題の発見と解決をする手法であり

  • Boundary-less(境界線のない)組織文化と行動様式を育てる取り組み

「ワークアウト WORK-OUT」の語源は、お客様にとって価値のない仕事(WORK)なんか、はじき出す(OUT)という意味が込められている(らしい)。

 

あらゆる組織の壁をぶち破り
問題の発見と解決を導き

環境変化に適応できる自己変革能力を獲得することで

変革を加速する手段「ワークアウト」


はじめに これはワークアウトセッションの講義スライド116枚(簡易版)の説明資料です。「学びの本質」Facebookグループでは、ワークショップを受講された皆さんに限って、すべてのスライドPDFのダウンロードが可能です。

 

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)において、日常茶飯事に利用される 「境界のない企業 boundaryless company」を実現するための組織運営の手法であるWorkout(TM)を、今回の変革加速リーダーシップ基礎で演習する。


 これは1980年代末からGE全社規模で導入・実施したもので、30万人の社員全員が、これを身につけていると思っていただいていい。GE workout もしくは GE ワークアウト でググれば、いくらでも詳細な解説が出てくる。


 ここでいう「境界のない企業」は、内部においては組織間や地域間の壁がなく、全員が一致団結するための障害となるような管理体制がない組織である。逆に「障害となるような管理体制」とは、日本企業でも(外資系でも)よく見受けられるような特定の個人および経営陣が、政治的な勢力を維持拡大することを目的に構成する「派閥」を意味する。


 そして外部においては重要な顧客との壁がなく、「顧客満足」や「お客さまの成果を最大化する」という共通目的に向かって、全社員が労力と知恵を出し合い、失敗を恐れずにリスクを取って挑戦し、失敗から学び、アジャイルに繰り返し挑戦し続け、成功するまで諦めない、全員が成長できる学習する組織そのものである。


 それはルールや規則やマニュアル、あるいは利用するツールやシステムの業務プロセスによって、運営されるものではない(業務プロセスに落とし込むことも重要ではあるが、それは結果としての話であって、それが原動力ではない)。それは働く社員の意識・価値観・行動様式すなわち企業文化によって成り立つものだ。そのためには、社員ひとりひとりが「環境変化に適応できる自己変革能力を獲得する」ことで、「学習する組織」と言う企業文化に成長することによってのみ実現できる。


 また、ワークアウトとファシリテーションは密接な関係があり、その応用範囲も広く、狭義では、会議の手法であり、テクニックであり、みなさんの社内会議、営業会議でも使え、社内のプロジェクトマネジメントや、大きな意思決定を行う際のベクトル合わせでも活用できる。


 広義では、人々の合意を得て、問題に立ち向かい、大勢の人を動かしながら、変革を加速する基本的な学習プロセスであり、コンセンサス、アクセプタンス、エンゲージメント、モチベーションという言葉が重要なキーワードになる。


 応用すれば、キーアカウントマネジメント(重要顧客管理)を担当する営業部門による顧客との打ち合わせや交渉でも、顧客への変革推進プロセスの教育でも絶大な効果を発揮する。事実、GEヘルスケア・ジャパン株式会社では、多くの取引先に対して、ワークアウト研修を何十年も実施してきている。


 ワークアウトを使って、問題や障害を解決するのも、組織の文化を変革するのも、自己変革能力の獲得するのも、どんな成果に結びつけるのかは、あなた次第だ。

問題ってなんだろう?

 ワークアウトは「問題の発見と解決を導く(測る・壊す・創る)」手法である。


 よく「問題だ、問題だ、問題だ」って言う人がいるけれど、それはまるで銭形平次の八五郎(知っています?)が「親分、てえへんだ、てえへんだ、てえへんだ、」と飛び込んでくるのとたいして変わらない。


 問題とは、単独で成立するものではなく、まずはじめに何か理想やゴールがあって、ゴールと現状とのギャップが「問題」だ、と定義したのが以下の図だ。 (以下の図のB2Bハックカードに関しては後述)




 ここで言う「問題」とは因果関係で言えば、結果に相当する。したがって問題(結果)には必ず原因がある。問題を解決する、ということは、すなわち根本原因を突き止めて、その根本を排除することで、原因の結果である問題を排除する、すなわち問題を解決することだ。


技術的問題解決と環境変化への適応

 ただ、技術的に解決が可能な問題(異常な事態を正常な状態へ戻す・環境の変化の影響を最小限にとどめる・人間の持つ本来の能力では実現不可能なことをテクノロジーによって次元可能にするなど)と、我々自身が生き延びるために、環境変化に適応できる自己変革能力を獲得することでしか問題に対応できない場合がある。


小学校の時に友達が遅刻してきて先生にこう問われた。


先生「なぜ遅刻してきたの!?」

友達「・・・・・あるいてきたから」

先生「じゃ、明日からはどうするの?」

友達「じゃ、はしってくるよ」


そうじゃない。


 真の原因、本質に迫れていない裏表の刹那的な対症療法でしかない解決策は何の解決にもならないが、実際にはよくある話だ。

  • コミュニケーション不足だから、 コミュニケーションを活性化しよう

  • 意識が変革されていないから、意識を変革しよう

  • 残業が多いから、残業をなくそう

  • 売上が足りないから、売上を増やそう

  • 危機感がないから、危機感を持たせよう

こうなると、もはや笑い話だが、実話である。御社にも覚えがないだろうか?


 あの友達が遅刻した原因は、寝坊したからなのだ。しかし、さらに根本原因を探れば、ゆうべ遅くまで漫画を見ていたか、ゲームをしていたか、テレビを見ていて夜更かしして、睡眠時間が普段よりも短くなったので、睡眠が不足して朝寝坊した、と言うのが根本原因なのかもしれない。あるいは宿題で知恵熱でも出して、よく眠れなかったのかも知れない。


 もちろん目覚ましをセットする、と言った技術的な問題解決でも対応は可能だろう。


仏作って魂入れず

 ただ根本原因を探らぬままで問題を解決しようとするのは、単なる対症療法でしかなく、それはインフルエンザに罹患したにもかかわらず、高熱が出ているからと、単に熱を下げるために解熱剤だけを飲んで済ませる、のと同じことだ。それでは熱は下がっても、インフルエンザがすぐに治るわけではない。原因を解決するためには、根本治療であるインフルエンザウイルスの作用機序そのものを阻害するタミフル・リレンザ・ゾフルーザなどの抗インフルエンザウイルス剤を飲む必要がある。


 また個人のインフルエンザを治すという視点だけではなく、社会という大きな目で見れば、感染対策をする必要があり、ウイルスにかからないために、インフルエンザに罹患している人に近づけない、事前に多くの人が免疫力を高めるためにワクチンを接種する、なども根本的な技術的な対策になってくる。


 ただ、マスクをするというのは技術的解決策に見えるが、本人の意思でマスクをつけてもらう必要があり、そこには、他の人に感染させない配慮をするという意識と行動すなわち適応の問題になってくる。


 同様に、抗インフルエンザウイルス剤は技術的な解決策ではあるので、患者に処方することはできるが、そのクスリを患者が自らの意思で飲まなければ、効果は発揮しない。


 遅刻した友達の話に戻すと、目覚まし時計をセットするという対症療法(技術的問題解決)では、彼は起きないかも知れない。自ら生活態度を改め(自己変革能力の獲得)、学校へ行くことが自分にとって楽しいことにでもならない限りは、彼の遅刻は治らないのではないか。


 技術的な問題解決と、環境変化に適応できる自己変革能力の獲得を例えると、馬を水飲み場に連れて行くことはできるが(技術的な問題解決)、馬に水を飲ませることはできない、馬自身が自分で喉が渇いて、水を飲みたいと行動を起こさない限りは水は飲まない(環境変化に適応できる自己変革能力の獲得しない限り、自分の行動を誰か他人によって変えることはない)。


 この問題は、変革を推進する上では、最も顕著に障害となる。働き方改革で、どれだけルールを決めようとも、ルールを守らなければ骨抜きで、仏作って魂入れずだ。

ワークアウトの基礎

こんな会議はないだろうか?いや、たぶんあるはずだ

□ 参加者がほぼ同じ (70~80%)

□ 人の意見を否定する(前例がないからダメだ)

□ 意見を言わせない雰囲気がある

□ 開始時間に遅れる人がいても誰も声をかけない

□ 議題以外の話を展開(具体性がない議論)する

□ 最後は精神論「目標に向かってがんばろう」

□ 結論が出ても実行されない

□ 準備不足(会議に出てから初めて資料を読む)

□ そもそもなんの会議がわからないけど、とりあえず参加した

□ 上司、職位、キャリア、ビッグマウスが仕切って自分の意見を押し付ける

□ いつも決まった人ばかり話す

□ まったく発言しない人がいる

□ 権限委譲ができていないため参加者がやたらと多い

□ 原因を特定しないまま、解決策だけを議論して盛り上がる

□ 会議の議題とは異なる問題点を話し合って終わる

□ 内職、居眠り、スマホをいじっていても誰も注意しない

□ 時間通りに終わった試しがない

□ 結論が出ず次回に持ち越す

□ 後日、決定事項が変わる

□ 議事録の内容が決定された事実と異なる

キリがない(笑)いや、御社でも胸に手を当ててみるといい。いくつ思い当たっただろうか?

チェックがいくつ付いたか数えてみよう____個/20

 

ワークアウトとは、その仕事に関わる

  1. 主要な人たちへ権限を委譲し

  2. 組織の壁、職種、肩書・職位、権威や権限のすべてを越えて話し合い

  3. 文化(意識・価値観・行動様式)さえも変え

  4. 無駄のない仕事の進め方、変革の障害を乗り越える方法、変革を加速する方法を見つけ出す


  5. 技術的な問題解決と自己変革能力を獲得する
の手法のことだ


ワークアウトの前提条件は、

  1. 参加メンバーは選ばれた各組織のキーパーソン(当事者:キーパーソンとは、検討テーマに関して最も詳しい現場の専門家を指す。つまり権限を持っているだけで検討テーマに詳しくないマネージャーが集まって議論しても意味が無い) >トップダウン(スポンサーから)で権限を委譲されている >ステークホルダーから権限を委譲されている


  2. 組織横断的なチーム活動により、組織の壁を取り払うと共に課題解決・変化に適応する自己変革能力の獲得を目的とする


  3. 課題 (検討テーマ) は通常、経営目標の達成に直結した課題

  4. 変革の障害となる問題(手段と目的を混同しない) >何が問題であるかを発見することから始めることもできる >技術的な問題解決であるか、自己変革能力の獲得かは問わない


  5. ワークアウトを通じて

  • 参加メンバーの間での経営への参画意識を育成し

  • 将来の機会と痛みの共有・ジブンゴト化でき

  • 参加者の合意の元で、技術的に解決できる問題に取り組み

  • また技術的な問題解決ができない「適応問題」の存在を理解し、環境変化に適応して自己変革能力の獲得でしか対応できない問題にも立ち向かい

  • 行動と結果を求める

  • 
と言う当たり前といえば、当たり前だが、これができていないことの方が普通は多い。


ワークアウト7つのステップ

 ワークアウトを行う上では、以下の7つのステップを設計すれば、とりあえず実施は可能だ。


  1. テーマ設定
:スポンサーがいる場合には、スポンサーが決める。ただ、どんなテーマでも良いというものではなく、経営課題に直結する問題、変革での困難や、5つの変革加速プロセスを推進するプロセスとしてテーマを設定する

  2. チームを編成:
テーマに関係する(問題の当事者、問題解決に必要な知識や経験・専門性を持つ、あるいは解決のための権限を委譲されている)メンバーをできるだけ部署横断や職位・職務・部署を越えて集めることで、多様性が問題解決や自己変革能力の獲得を加速する

  3. ワークアウトの実施

  4. スポンサーへ解決策の公開提案

  5. スポンサーによる判定回答

  6. 解決策の実行

  7. 結果を評価・改善・プロセス化


ワークアウトで大切な4つのポイント(GRIP)

1.目標と成果物(GOAL)

目標及び成果物(会議で決めること) を測定可能な形で作成する

2.役割と責任(ROLE)

チームに対する各々の役割と責任を定め、同意を得る

3.プロセスと活動(PROCESS)

実施すべき効果的な進め方を練る

4.チームの合意(Interpersonal Relationship)

チームの合意を形成し、アクションを確認して、実現への行動の約束を得る



これらを順に追って見ていこう

1.目標と成果物(GOAL)


 ワークアウトを成功させるには、会議開催案内の時点で5W1H1Gにより、目標と成果物を明確にする。

  • WHY 会議の目的

  • WHO 参加者

  • WHAT 討議内容

  • WHEN 日時、日程

  • WHERE 場所

  • HOW 手段・方法

  • GOAL 目標


これを踏まえた会議案内の作成時のポイントとして、

  • 会議を開催する目的は何ですか?

  • 目的 (テーマ) の現状は?

  • この会議に参加する人は、
どなたが適任ですか?

  • その参加者は議決する権限を委譲されていますか?

  • 会議の時間配分・アジェンダは?

  • 資料は事前に配布されましたか?

  • ゴール、成果物は明確ですか?


 もしも、これが決まっていない会議案内が流れてきたら、参加しないと決めるか、主催者にフィードバックをして、5W1H1Gを明確にさせるといいだろう。


 議事録はプロセスの記録より、結論(約束したこと)を明確にするものなので、以下のように聞いてみるといいだろう

  • あの会議で、何がどう決まったのですか?

  • それを、誰が、いつまでにやるのですか?

  • では、1 週間後に進捗を聞かせてください


2.役割と責任

ワークアウトに関わる 6 つの役割

 6つの役割が必要というと、6人で1チームが前提のように聞こえるが、スポンサーはチームに入らず、議論には加わらないし、ファシリテータ以外は兼任していいので、最低4人いればいいわけだ。

  1. プロジェクト責任者もしくは問題解決のスポンサー・キーステークホルダー

  2. 全員が協力するためのファシリテータ

  3. 時間を有効に使うタイムキーパー

  4. 学びを記録する書記

  5. 学びをシェアするプレゼンター

  6. チームのメンバー


では、これらの役割に関して、詳しく見ていこう。


スポンサー・キーステークホルダー(プロジェクトの責任者、問題解決の指示者)

プロジェクトの責任者、問題解決の指示者

問題を抱える部門の権限と責任を持つ

組織のリーダーが務める

ワークアウト開催の予算やアクションプランの決定承認、推進のサポートに責任を負う

最終的なすべての責任を負う


ファシリテータ(進行役、活性化役)

決められた役割を出来ているか
「〜さんの役割はだいじょうぶですか?」とチームの成果を最大化する

全員が意見を言えたのか?
「〜さんはどう思う?」と引き出す

何に何分の時間を使うのか決める

人々の合意を形成する

常に目的を思い出させる・引き戻す

優しく笑顔で皆が楽しめるように


スクライバー(書記役)

全員一致で決まったことは何か?

うまくできたこと、できなかったことから、何を気づいたのか?

紙に書き出していく

議事録(行動の約束)をつくる

スポンサーへの説明資料の作成責任を持つ


タイムキーパー(時間係)

与えられた時間を守る・守らせて、時間内で成果を出す

仲間があわてないように早めに言う

「あと何秒で〜が終わるよ」

「〜が終わったら次は〜が始まるよ」

遅れを取り戻す助言をファシリテータにする


プレゼンター(発表者)

要点をまとめ、ポイントを押さえ時間内に発表をする (発表前にメンバーの前でリハーサルを行なう)

チームの学び・決定・提案を伝える

学びの場合には、正解も間違いも無いので、自信を持ってハキハキと、大きな声で伝える


メンバー(チームメンバー)

現場の一線にいる専門家が、最も現場を知っており、問題を知り尽くし、有意義なアイデアを持っている。権限を握っているだけの現場を知らないマネージャーたちが集まって、現場の問題を取り上げて、どうやって解決するか、などと無駄な話し合いはしないこと。単に頭数を揃えるためだけに、無作為に人を送り出したり、順番に経験させる、若手だけ、ベテランだけ、と今までの慣習に盲目的に従って人選を間違った時点で、すべては水の泡となる。



3.プロセスと活動

の4つのポイント


 ワークアウトをする上で理解しておくべきと理論とスキル、必要な事前の準備と、実際にとるべき会議のプロセス、そして解決策を実行する上で必要なチェックポイントを見ていこう。

1) 理論とスキル

  • ファシリテーターの心構え、理論、取るべき行動を実践できるようになっておく

  • 技術的な問題解決手法、環境変化に適応する自己変革能力の獲得、合意形成(コンセンサス)、アクセプタンス、モチベーション、エンゲージメント、意思決定方法を理解し使いこなせる

  • 各プロセスでのツールの使い方を会得する

2) 事前準備

  • 開催の準備・日程・開場・メンバーの確保

  • CXLコミュニケーション実施

  • 問題点 (データ) を理解し、分析する

  • 議事案内書 (必要ならデータを作成、事前配布する)

3) 会議

  • 進行を適宜修正する

  • 目指す方向・目的と実際が合っているか

  • 問題解決プロセスのどの段階か

  • グランドルールは守られているか

  • メンバー全員の認識を確認し、一致させる

  • 合意を形成し、意思決定・結論を導く

  • スポンサーに結果を報告する

  • 学びをシェアする


4) 解決策の実行

  • スポンサー・キーステークホルダーから承認された結果 (解決策) を確認する

  • 承認された結果 (解決策) を実行する

  • 報告会などを企画し、改善の定着を促進する・プロセスへ同化する

  • プランに従って結果を時系列で評価する

  • 文化を育てる


4.チームの合意

には、さまざまなレベルがある


 事前にチームの合意形成の方法を決めておかないと、合意が必要になった時点で、延々と議論をする羽目になり時間だけが過ぎていく。合意はコンセンサス以上でなければワークアウトをする意味があまりない。合意形成度が低い順から高い順へと見ていくと、

  1. リーダーが一人で決める

  2. リーダーが皆の意見を聞いた上で決める

  3. 多数決で決める

  4. コンセンサス

  5. 全員一致(アクセプタンスが高い状態)


1〜3は、チームメンバーが意思決定方法に合意をしているだけで、決定内容に合意したわけではない。


4〜5は、意思決定方法にかかわりなく、決定内容に合意していることになる。


合意形成度が高くなるようにファシリテートするのが腕の見せ所だ。このコンセンサスとは、

  • 私の見解は全員に理解されていると信じることができる

  • 他の人たちの見解を私は理解している

  • この結論は目的の要件を満たしている

  • オープンに公正に意思決定が下されたので、私はこれを支持する

  • 公平な議論の末「私はこれでも良い」と全員が思えた結果になったのか


ここに至るまでのチームのキモチの変化を見逃さないようにするのがポイントだ。


 「コンセンサス」は、チーム全員が反対はしない=受け入れても構わない(意思を表明した時点では、自ら進んで積極的な支援や協力を約束する賛成ではないが、チームとしての決定に従う)ことを意味しているにすぎない。


 もちろん全員が一致し、アクセプタンスの高い状態での合意が望ましいが、そのためには時間と労力の投資が必要になる。変革にかけられるリソースは有限であり、投資配分の選択と集中を行わない限り、変革を最後までやり遂げられない。変革がリソース不足で息切れをしたり頓挫してしまうことがないように、戦略的かつ計画的な投資判断が求められる。


アクセプタンス

 GEではその昔、成功したプロジェクト100件と、失敗したプロジェクト100件を徹底分析して「なぜプロジェクトは失敗するのか」を研究した。成功・失敗双方のプロジェクトの成果を約束したはずの企画書は、品質ではどれも優れており甲乙つけがたかったのに、結果は明暗を分けた。それはなぜだろうと調べ、失敗したプロジェクト関係者に徹底的にヒアリングしたところ、ようやく共通点が見つかった。失敗したプロジェクトでは、アクセプタンス(何かを受容する態度・姿勢のことで、「受け入れ度合い」とでも訳す)が足りなかったのだ。


 これを変革の品質とアクセプタンスと結果の3つのファクターで公式にすると

Q(成果品質)× A(アクセプタンス)=E(効果)

と言うかけ算になるため、アクセプタンスがゼロでは、かけ算の結果はゼロになるため、効果が出ない。


 このアクセプタンスが、プロジェクトのチームメンバーやステークホルダー、最終的にプロジェクトの恩恵を受けるエンドユーザーのどこかで低いか欠如していたことで、プロジェクトの成否を分けたのだ。その結果としてチームワークが破綻したり、ステークホルダーからプロジェクトへの協力が得られなかったり、エンドユーザーにプロジェクトからの提案を拒否されたりして頓挫してしまったのだ。


 ここで、チームがコンセンサスを得る・アクセプタンスを高めるまでにたどる合意形成の変遷を見てみよう。


この図からも分かる通り、一度は揉めてぐちゃぐちゃになって、それからだんだんと整っていくものなので、すんなりいくのはかえって怪しい。本音でぶつかり合えないと、成果は出せないのだ。


 つまり、最初は喧嘩もせず、メンバーが集い、他人行儀に大人の対応をそつなくこなすが、それでは議論にならないし、コンセンサス・アクセプタンスなど永遠にやってこないので、意見が対立したりすることを恐れずに、言葉は選びつつも、言いたいことを言い合って嵐を迎え撃つ。


 しかし、雨降って地固まるの諺の通り、その後にはお互いの意見の違いを理解し、相互に強みと弱み、違いを補完し合うことで秩序が訪れる。そこまでくれば、あとは一気に成果に向けて議論を問題の解決に向けて集中させていくだけだ。


具体的なワークアウトに入ろう

 参加者は、4~6名程度で1グループを形成し、ワークアウト会場のテーブルは、島型の配置であることが望ましい。


 また、普段は一緒に仕事をしない人がグループを形成することが望ましい(MUSTではない)し、また年齢や性別も偏らない多様性の高い構成が、より議論を価値あるものへと変えていく。グループ分けは参加者の自由にはせずに、事務局が戦略的な意思を持って事前に決めておくことが求められる重要な決断である。


各グループで必要とする機材は、以下があるといい

  • ポストイット・付箋紙(75 x 75の正方形) 必須、色は指定なし

  • 黒のサインペン(ぺんてる)必須

  • 模造紙、もしくはフリップチャート(ホワイトボードでも可能)

  • 太めのマジック(黒、青、赤の3種類、もしくは黒と赤の2種類が望ましい)

  • メンディングテープ(模造紙を壁に貼るため、粘着性のあまり強くないもの)

  • ストップウオッチあるいはその機能を有する時計かスマホ


このほかに講師(ワークアウト全体のファシリテーションのマスター)用に、

  • プロジェクター

  • ホワイトボードとマーカーペン

  • 会場によってはマイク

  • 秒単位で表示される大型のタイマー

があると進行が速やかに行える。


 また、会場はできるだけ狭くなく、余裕を持って参加者が席を立って、動き回れるスペースがあると、さらに活発で生産的な議論を生み出しやすい。おもしろい傾向なのだが、座ったままで議論したチームと、立ったままで議論をしたチームとでは、スピード感が違うだけではなく、成果の品質もかなり上がるようだ。理由は不明だ。また、一人でも議論中に腕組みをしているメンバーがいるとコンセンサスを得るまでに時間がかかるという傾向も見受けられる。ご注意願いたい。


 ワークアウトは業務の一環ではあるものの、日常的な業務から離れ、服装もカジュアルにすることで、より参加者が普段とは異なる言動・発想をしやすくなる。人間ってけっこう単純なのだ。


 ワークアウト全体を通じて、参加者全員に守っていただきたい共通の掟(おきて)をグラウンドルールと呼ぶ。これは、毎回決まったものを事前に提示するようなことはせず、ファシリテータが、参加者に呼びかけて意見を募り、その場で紙に書いて決めることが多い。


グラウンドルール(以下はあくまで事例)

  • 積極的/自主的に参加する、座ったままよりたったまま

  • 人の話を最後までよく聞く、途中でさえぎらない、批判しない

  • 人の意見や発言を笑ったり、バカにしたり、からかったりしない

  • まずは受け入れて、否定をしない、違う意見こそ最も価値がある

  • Safe Haven(安全地帯)、あくまでここだけの話

  • 一人が1分以上話し始めたら、レフリーストップを入れる

  • On Time (時間を守ろう)

  • 消極的な仲間を引っ張り、支えて一緒にやる

  • 言葉を選ぶより、素早く、ストレートに書く、言う

  • 考える前に動く、準備する前に動く、悩む前に話す

  • 楽しく学ぶ

  • 笑顔を絶やさない

  • 創造的になる、絶対に無理と言わない、時間もお金も人も無制限で、なんでもできると考えてみる

  • できない理由から考えない(言い訳)、どうすればできるかを考える

  • もし自分が社長だったらと考えて、目線を高くしてみる

  • もし自分がお客様だったらと考えて、目線を現場に近づける

  • 互いに役割を分担し、交代する

  • 今日だけ、声は大きく、大きなお世話、おせっかい好きになる

  • 仲間の勇気ある発言をレスペクトする、必ず拍手する、絶賛する

  • 見栄を張らない、正直になる、自分の弱さをさらけ出し、仲間に助けてもらう

  • 発表者には、拍手や掛け声をもって栄誉を称える

  • 少数派意見こそ、しっかり聞く

  • 疑問に感じたら、空気を読まずにすぐに質問する、決して忖度はしない

  • 上司と部下の関係は無く、皆が平等で、職位で意思決定を誘導しない

  • 新人と先輩、後輩、という関係もなし、皆が平等で同意・同調を強要しない

  • 平凡よりも非凡であること、普通よりも特別であること、一人だけでもよい

  • たくさん挑戦する、失敗も OK!失敗を恐れない!失敗から学ぶ

  • 間違った発言をしたら恥ずかしいと思わない、学べることに感謝する

  • 携帯・スマホは OFF またはマナーモード

  • 内職禁止

  • トイレも飲み食いも、いつでも好きな時に

  • 問題を解決して対策プランを実行するのは、自分たちであって他の誰かではない


 議論が活発になって、意見が出はじめると、ワークアウトでのゴールが一つに共有されていたとしても、一度活性化された脳は、いろいろなことを勝手に結びつけて、普段では考えていなかったり、疑問に思わなかったりしたことが、思いついてしまったりする。それはそれで素晴らしいことだ。しかし、ワークアウトのゴールと違うことに議論を費やす時間的な余裕はない。それでも、これは重要だとメンバーが思うことは、たった一人の意見であろうとも尊重し、「別の機会に話し合う」ことをコミット(約束)して、一旦は議論から外しておくことで、ワークアウトのゴール達成を優先する。


 しかし、これは子供騙しではなく、主催者が責任を持って、その話題について話し合う(個人的にで、組織的にでも、どちらでも本人が納得するのであれば構わない)ことにする、それが、ここでいうパーキングロットだ。

「では今回は、そのご意見は、いったんパーキングロットに留めておきましょうね」とか、にっこり笑って言うと良い。


パーキングロット

  • フリップチャートを 1 枚用意して、大きくPと書いて丸で囲っておく(ポストイットに書いて壁に貼るでも良い)

  • 議論をしていて、今の議論とは直接は関係ないけれど、大事だなと思うことをポストイットに書く

  • 「P」と書いたフリップチャートにそのポストイットを貼っておいて、あとで戻れるようにしておく

これで、ようやくワークアウトの準備ができたのだ、そうだ、まだ始まっていない。さて、ここからがワークアウトのメインの部分になる。

活発な議論から結論を導き出すための6つのツール


1. 測れるモノはすべて改善できる! 頭の中を見える化してアイデアを出す

  • ポストイット・ブレインストーミング

  • KJ法(親和図)

  • B2Bハックカード

  • アンダー・ザ・アイスバーグ

2. 成果の出ない無駄を捨てて絞り込む

  • ペイオフマトリクス

3. 成果の出るものを創り実行に移す

  • 行動の約束・実行計画表


 まずは、ワークアウトのお題に対して、各人の意見や提案や考えを徹底してアウトプットするのが、このセッションの目的だ。求められているのは鋭い洞察ではない、あるいは熟考した思考ではない、練りに練った重みのある一言ではない。必要なのは数とスピードだ。



「~~~に関して、問題だと考える点をあげてほしい」というお題が出たら、1分で15から20くらいはポストイットに書き出せるスピード感が求められている。それが普通であり、世界の標準だ。2分で4~5だとしたら、お話にならない。ここでは質よりも数が必要となる。


 ルールは、1枚のポストイットには一つの問題点や項目しか書いてはいけないことだ。他の人が読める文字で、わかりやすく大きな文字で、簡潔に記す。ボールペンで細かい文字で長い文章を書き込んだり、箇条書きでいくつも1枚のポストイットに書き連ねたり、自分だけしかわからないメモでは話にならない。 サインペンで大きく書く、これを徹底する。


 お題が問題点だろうが、アイデアだろうが、なんでも一緒だ。大切なことなので、もう一度言う、必要なのは数とスピードだ。

1. 測れるモノはすべて改善できる! 頭の中を見える化してアイデアを出す


ポストイット・ブレインストーミング


というと、とにかくアイデアを出せばいいアイデア合戦だと思われがちなのだが、決してそうではない。しかしアイデアの質を問うのがブレインストームでもない。目的は、一人でブレインストームすることを奨励しているわけではなく(一人では無理っぽい)、複数の価値観の異なる仲間、できれば普段から一緒に仕事をしない役割の異なる、視座が異なる、部署や働く環境や経験が異なる仲間とのディスカッションによって、お互いに刺激をして、刺激を受けて、世の中にはかくも異なる視点や考え方、そして価値観が存在するのか、という多様性を肌で感じて、お互いの違いを認識し、尊重することこそ、ブレインストームの醍醐味だ。



 そうはいっても、アイデアが出ないと作業としてのブレインストームが成立しない。あまりHOWにこだわるのは好きではないけど、誰でもできるアイデアのだし方という方法論があるのだ。決して個人のイマジネーション・想像力・創造力に依存することなく、簡単にアイデアを量産する方法そのものだ。


他の人が出したアイデアを活用する

(人間の脳の構造に基づいたアイデア量産方法)

他の人が出したアイデアを、こんな具合に変化をさせてみる。

• 大きくする <—> 小さくする

• 早くする <—> 遅くする

• 高くする <—> 低くする

• 長くする <—> 短くする

• 天地をひっくり返す <—> 左右反転する <—> 前後を逆にする

• 細かくする <—> 荒くする

• 重くする <—> 軽くする

• 透明にする <—> 不透明にする

• 広げる <—> 狭める

• 押す <—> 引く

• 書く <—> 消す

• 延長する <—> 短縮する

• 公開する <—> 非公開にする

• 伸展する <—> 圧縮する

• 太くする <—> 細くする

• 強くする <—> 弱くする

• 綺麗にする <—> 汚す

• 進める <—> 後退する

• 上げる <—> 下げる

• 片付ける <—> 散らかす

• 集約する <—> 拡散する

• 熱くする <—> 冷たくする

• 高額にする <—> 低額にする

• 開始する <—> 中止する

• 明るくする <—> 暗くする

• 形を変える <—> 曲げる <—> 伸ばす

• 四角にする <—> 丸くする <—> 三角にする

• 簡単にする <—> 複雑にする

• 色を変える <—> 音を変える

• 味を変える <—> 匂いを変える

• 外に出してみる <—> 中へ入れてみる

キリがないけど、上記のような具合に、少しだけ変更を加えるのだ。


 これ以外にも、変更を加えることができるポイントはいくつもあるはずなのだ。自分なりに探してみるといい。

例えば、それらを組み合わせるだけで、

  1. 色を8種類に変化させる

  2. 形を3種類に変化させる

  3. 重さを5種類に変化させる

 単純計算では、たったこれだけで8x3x5=120通りの変化を創造できるのだ。ブレインストームで、頭をひねりながらポストイットを120枚書く手間を考えると、単純な作業をするだけで、かなりのアイデアが量産できるのは一目瞭然だ。出来上がったアイデアの組み合わせが、意味があるかないか、という質に関しては製造過程では問題にせず、あとで検証すればいいだけだ。つまり、目利きは必要になる。


 おそらく、これは誰もが、脳の中で無意識にやっていることなので、自分もそうしている、という人も多いはずだ。


2. 成果の出ない無駄を捨てて絞り込む


書きあげたポストイットは、KJ法で整理、分類してグルーピングしていく。



 さて、 一人が1分で20枚のポストイットを書きあげたとしよう。1グループに、五人いれば最大で100枚のポストイットがたった1分で出揃う事になる。普段の会議では、ほとんどの人が意見を言わずに黙っていることが多いだろうから、これは驚異的な生産性だ。



 ポストイットは、同じような意見をまとめていき、分類し、全員の意見の傾向がわかるようにしていく。そのためには模造紙やフリップチャート、あるいはホワイトボードや壁面に、書いた端からどんどん貼っていく事になる。誰かに貼ってもらうのではなく、自分で貼っていくのだ。気を使って、上司のぶんまで貼りましょうなどと親切ごかしをしている場合じゃない。


 では、誰が貼ったものを分類して、似た者同士のポストイットのコメントをまとめていくかといえば、それはメンバー全員だ。ここでもスピードが求められる。だいたい、100枚の分類なら、遅くて5分。早ければ1分だ。もちろん、ファシリテータが、それを促し、活性化するのだ。


ど うすれば、早くできるかといえば、100枚を全部貼ってしまってから、後から似た者同士を探して分類していくのは時間がかかる。これではダメだ。


 ポストイットを貼るときから、分類を始めていくのだ。だから一番最初にポストイットを貼る人の任務は重要だ。自分のポストイットとはいえ、似たようなものなど、仲間に分類できそうだったり、近いものと遠いものは区別して、スペース全体を活用して貼っていく。それを見た次の人が、最初からその分類に合わせて、貼っていく。そうなると貼っていく作業中にどんどん分類をしていくことになるし、自分のポストイットだけではなく、他の人の貼ったポストイットが、貼っておく場所が違ったりしたら、どんどん張り替えてしまうのだ。五人いれば、目は10個で、手も10本あるのだから、仲間が貼っていくのを、ぼ〜っとしてみていないで、どんどん手も口も出していくことが、声を掛け合っていくことが早めるコツだ。だって、これはチームで成果を出す練習なのだから。


この時に分類方法に慣れていないと、返って混乱が増長される。

例えば、5つの分類が

  1. 問題点

  2. 障害

  3. 悩み

  4. 困難

  5. ギャップ


これでは区別のしようがない。笑い事ではなく、実際に起きることだ。


 きっちりと誰でも分類できる、しかも分ける意味があるかどうか、まで考えないといけないのだが、一般的にはMECE(ミーシーと呼ぶ)と言われる「もれなく、だぶりなく」という分類がベストだ。ロジカルシンキングの常套手段だ。たとえば

  1. 内因性

  2. 外因性

  3. どちらか不明

だったらどうだろう。もちろん、その問題そのものがどちらかどうか判断できない、となると分類以前の問題であるが。


 一人で考えて悩まずに、口に出して他のメンバーの意見を聞こう。三人寄れば文殊の知恵、一人でできないことも、チームメンバーと一緒であればできるものなのだ。お互いに口を出し合い、かまい合うのだ。


そう、ワークアウトでは、

  • 大きなお世話の

  • おせっかい好き

  • 声が大きな でしゃばり

が美徳なのだ。


 そうやって似た者同士の仲間のポストイットが島を作って行ったら、マーカーで丸く囲んで、ポストイットの枚数を数えて、脇に何枚と書き込んでいく。


この枚数がポイントだ


 つまり枚数が多いということは、それだけ皆の関心度が高い共通の問題点やアイデアだったりするわけだ。関心度が高ければ、議論も活発になるだろう。


 しかし、たった1枚の意見だからといっても、無視をしたり、軽んじてはいけない。考えてもみたまえ、天才は孤高で孤独で、ちょっと変わっているし、常に少数派なのだ。イノベーションは亜流からしか生まれない、主流な平凡さからは出てこないのだ。


 天才云々はともかく、現場をよく知る専門家が参加すべきワークアウトでは、たった一人の意見が極めて示唆に富み、真実を、現実を言い表していることが実に多い。


 だから、少数意見ほど貴重な意見として、重く受け止めることも重要だ。つまり、ポストイットの枚数が多いと言うことは、皆の関心が集中している多数派であることを意味するだけで、良い意見であるわけではない。また、枚数が少ないことが価値の少ない・重要ではない意見という意味ではないことを、参加メンバー全員がよく理解しておく必要があるし、特にファシリテータはそれを体現しなければならない。


 ここでは、あくまで整理分類し、枚数を数えておくだけで、善し悪しの判断はしない。

B2Bハックカード


顧客のゴールを理解し、かつ抱える問題点を明らかにするプロセスを、カード10枚を使って共有するためのツール。顧客とだけでなく社内の打ち合わせや会議、そしてワークアウトでも利用できる。 このB2Bハックカードを参加者全員に配布する。下記のリンクからビデオを見て、どう使うのか、を学んで欲しい。名刺サイズなので常に持ち歩き、すぐに取り出して使う癖を付けるといいだろう。


https://youtu.be/W6nW5RMCYSM


アイスバーグ

これは、ものごとを測るときの注意点を氷山の下になぞらえたもので、今現時点で、目に見える主観だけを切り取るのではなく、物事の時系列のできごとを追跡し、因果関係を紐解き、思い込みがないかをチェックするものだ。指さし確認のように使うと良いだろう。かなりの割合で、気がつくことがある。




ペイオフマトリックス

 これは何かを実行するというプランを作るときに、複数の候補からの優先順位付けの方法論だ。



 ペイオフマトリックスをもちいて、得られる成果と難易度の高低から 4 つの グループにわけていく。縦軸は効果、横軸は難易度でプロットしていく。


  1. 成果が高く、難易度が低い (左上)→ すぐにやる

  2. 成果が低く、難易度が低い (左下)→ すぐにやるの次の候補

  3. 成果が高く、難易度が高い (右上)→ 長期的に重要

  4. 成果が低く、難易度が高い (右下)→ やる価値がない

 これを使えば、ワークアウトメンバーの中で優先順位を付けるうえで、見える化して同じ評価軸で判断できるようになる。投資できる人材、時間、コストの制限によって、あるいは市場や顧客などの外部環境によって、難易度が変わってくるので、どれかだけに投資すると判断するか、二兎を追うのか、などの判断が求められる。


3. 成果の出るものを創り実行に移す


行動計画表(5W1H1G 誰が、何を、いつまでに、どうする)を作る(フォーマットは自由)。



 この1~3のセッション

1. 測れるモノはすべて改善できる! 頭の中を見える化してアイデアを出す

2. 成果の出ない無駄を捨てて絞り込む

3. 成果の出るものを創り実行に移す

を1ワークアウト単位として、1ワークアウトは10分から30分、長くても60分で、繰り返していく。


 ワークアウトでの成果の一つは、行動計画表を作成し、メンバーの合意を得て、経営陣の承認を得る、までとなる。


スポンサーによる判定回答

 自分たちで決めて、自分たちで実行するだけであったとしても、スポンサーの承認を得ることだ。実行にたとえお金がかからないとしても、メンバーの時間と労力を使うのであれば、それは会社の資産を投資する判断になるので、スポンサーや送り出してくれたステークホルダーの承認を得るのは絶対だ。


この場合、スポンサーは、3つの回答だけが許される。

1)承認する

2)承認しない、何故ならば、と承認しない合理的な理由を説明し、提案したメンバーの理解を得る。理解を得られないまま、「とにかく承認しないから」と一方的な通達ではあってはならない。

3)要求をする「判断するには、足りない情報があるので、これについて教えて欲しい」と。



こうやって承認を得られたら、チームメンバーは責任を持って、実行をする。

ファシリテーションってなんだろう

 どこかでファシリテーション、あるいはファシリテータというのは聞いたことがあるかと思う。


 おそらくそれは会議の場での「ファシリテータ」役というものだったかもしれないが、ファシリテータは何も会議の中だけの役どころではない。


それは、

チームメンバーの個々の能力を最大限引き出して、チームの成果を最大化して、チームのゴール達成を加速することが役割となる人
 のことだ。


つまりチームが存在して、初めてファシリテータも意味のある役割を演じられる。そもそもグループとチームの違いは以下の図のように定義している。



それって、チームリーダーのこと?

 リーダーには、様々なスタイルがあるので、ここではその良し悪しは問わないが、一般には

1. 指示型(昔の「俺についてこい」、問われなくとも答えを与えようとする)

2. 支援型(近年、注目され始めたファシリテーション型リーダーとも呼ばれ、メンバーの可能性を引き出し、権限移譲、動機付けをしていくだけで指示や答えは与えない)

 そう、ワークアウトの場だけではなく、複数のメンバーが集まって同じ目標に向かって突き進むチームのリーダーにも、常にファシリテーション能力が求められるのだ。つまりは仕事をする上では、誰もが当然必要とされるスキルだ。したがって、これをお読みの皆さんにも求められるということだ。そこで、みなさんにはファシリテーションを身につけていただく。


 また、「なぜ、これからはファシリテーション型リーダーが必要か」については、みなさんと一緒に考えていきたいので、ここでは触れないでおく。

ファシリテーションする

 経営者として、チームリーダーとして、チームメンバーとして冷静に全体の状況を見ながら、チームのやる気に火をつける「ファシリテーション」とは、


 これが、ファシリテータのお仕事であり役割だ。 身近な問題解決から、経営、営業、マーケティング、変革の推進まで、ファシリテーションが役立つ場面は多く、以下のような利点が挙げられる。


  • メンバーがプロセスよりも、内容に集中できる

  • メンバーは個別最適より組織全体の観点(全体最適)から考察、議論、意思決定、行動しやすくなる

  • 組織はメンバー各々の持つ知恵を最大限活用できる

  • 問題解決、イノベーション、意思決定、環境変化に適応できる自己変革能力の獲得の助けになる

  • 権限委譲 (実務担当者に決定と行動の権限を与えること) を加速する

  • メンバー同士のチーム団結力が高まる

  • 決定に対してのメンバーの行動の約束が得られる

  • 会議の効率性が高まる・変革が加速する


 なんだか、いいことづくめに聞こえるが、そのファシリテータに皆さんになっていただき、ファシリテーションをできるようになることで、本来のテーマである「変革加速リーダーシップ」になっていく。これは理論や実例を座学で学んでも何も変わらない、これまでに多くの日本の企業が変わっていない事実、MBAを取得した経営者が山ほどいるのに何も変わらない、そう学ぶだけでは変わらない。実行してこそ、結果がともない(ここでは結果の良し悪しは問題ではない)、変化が始まる。

ファシリテータに求められる6つの行動様式

1)ファシリテータは、適切なコミュニケーションをする

1. ファシリテータは、常にゴールを確認し、HOW(どうする?)にばかり傾くことなく、常にWHY(なぜするのか?)を意識づける

2. ファシリテータは、グループメンバーが話している内容だけでなく、語られない感情にも耳を傾ける、これは傾聴と呼ばれている。

3. ファシリテータは、 メンバーの理解度を確認したり、議論を促したりプロセスを踏んでいくために質問をする

4. ファシリテータはツールやプロセスについて自分の考えを述べ、それを共有する。

5. 決定を下す際にブレインストーミングを提案したり、話を本筋に戻すなどして、介入する。


2)問題行動へと対処する


 参加者の中には色々な人間がいる。ポジティブな行動を取る場合もあれば、ネガティブな、特に他のチームメンバーに影響を及ぼし、ワークアウトが継続できなくなるような場合だってある。そうした議論への集中をそぐような問題行動には対処が必要で、以下の順番で介入レベルを上げていく。

1. 無視・避ける

2. 目で合図する

3. 半分くらいの距離まで本人のところまで歩いていく

4. 間近で、目で合図する

5. 「どう思いますか?」と聞いてみる

6. リフレクションをする『気が散っているようですが?』

7. 休憩時に指摘をする

8. グループの前で注意する

9. 退場させる


3)徹底して傾聴する(つまり、話すよりは聞き役に回る)

  • アイコンタクト、適度な相づち

  • メモを取るよりも聴く

  • 相手が話している間に口を挟まない、遮らない、打ち切らない

  • 相手のペースに合わせ、急かさない、最後まで聴く

  • 相手から目を離さずに、言葉に表れないメッセージに気づく

  • 相手が話したい、聴いて欲しいと思える人・態度・行動を学ぶ


 聞いてくれているというのがわからないと、話したいと思わないので、話しかけられたら、まずは体を相手の方に向け、相手をレスペクトして(尊重して)聞く、自分が話すよりも聞く。


上手に聞くことで、話し手は自分自身で問題を解決できるので、今日から聞き上手になろう。

傾聴の狙い

• 判断や評価、指示やアドバイスをせずに、相手を理解することに徹する(が相手に伝わる)

• 相手が自分のニーズ、意志、動機、悩み、問題を率直に語ることを助ける

• 相手が自分の深層心理、無意識の判断や行動に気付くことを助ける

• 相手が選択肢を広げることを助ける

• 相手が自分の意志を固めることを助ける(誘導はしない)


4) 基本はまず相手に話しをさせてから

1. オウム返しする

2. 違う言葉に言い換える

3. 相手の話したことを自分の言葉でまとめる

4. 自分の認識を整理して、話し手に伝えて正しいかどうかを確認する

5. 相手の考えを自分が正しく認識していることを伝える(同意することではない)

6. 相手の気持ちや感情を受け止めていることを伝える(同情することではない)→共感できるといいのだが。

7. 掘り下げる質問をする(ディープダイブという手法、次の5で詳述)

8. 視点を変える質問をするリフレームという手法、次の5で詳述)


5) いい質問が議論を前に進める


 質問の引き出しをたくさん持っておくか、最初はリストにしたものを手に持っていても大丈夫。そのうちに身体が覚えてくれる。 以下は、あくまで一例でしかないので、自分らしい言い回しを作っておかないと、ファシリテータ全員が判で押したような同じ質問をすると、ちょっと嘘くさくなるから注意が必要だ。


<掘り下げる質問>  ディープダイブという手法(順番に使ってみよう!)

1. なぜそのように考えますか

2. どういう理由ですか

3. どうしてそうなったのですか

4. ~ についてもう少し詳しく話してくれませんか

5. ~ とはどういう意味ですか

6. 何か具体例はありますか

7. 今の意見は A さんと似ていますが、どのように結びつきますか

8. 例えば具体的にどのような経験がありますか


<視点を変える>リフレームという手法(順番に使ってみよう!)

1. 他の皆さんはどうお考えですか

2. 社長、部長の立場に立ったら、どう考えますか

3. 賛成意見は出ましたが、反対意見はありませんか

4. 違う考えの人はいませんか

5. まだ発言していない方はどうお考えですか

6. 他にどんなことが起こりましたか


6)ファシリテータは討議内容よりプロセスを重視する

 討議の内容が良かったか悪かったか、面白いアイデアだったかどうか評価するのではなく、


1. 適切なプロセスを経ているのか

2. メンバーの能力を引き出せたのか

3. 全員が満遍なく発言できたのか

4. 時間配分は適切だったか

5. メンバー内で合意・コンセンサスを引き出せたか

6. 決めたことを責任もって実行できたか

7. 最後に結論を出せたか(どういう結論かはともかく)

という点がチェックポイントだ。


 とにかく、こんな形式知は読んで学ぶのはせいぜい2割で、実践で覚えて暗黙知として取り込むのが8割だから、まずはやってみること、経験してみること、失敗して、痛い目にあって、学んで、やり直す、を繰り返して体得していくしかない。


研修当日までに、以下の記事も事前に読み込んでおくこと


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